障害者を雇おうと考えている企業であれば「合理的配慮」という言葉を見聞きしたことがあるでしょう。合理的配慮とは簡単に言うと、障害者が社会で生きていくために配慮することです。
単語の意味はそこまで複雑ではありませんが、具体的に何をすれば良いのかわからないでしょう。そこでこの記事では、合理的配慮とはどういったものなのか4つのポイントや実行の流れを踏まえて紹介していきます。
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合理的配慮とは「障害者の困りごとを取り除く調整」のこと
合理的配慮とは、障害者が社会で生きていく中で発生する困りごとを取り除くための調整です。障害者が自分らしく働くために、「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」などの法律によって企業に課されています。
人には全員が平等に幸福を得る権利がありますが、障害や個性などによって差が生まれてしまっているのが現状です。たとえば身体障害がある人は、行動に制限がかかるので障害のない人と同様の活動はできません。
そこで合理的配慮を施すことによって、全員が等しく働けるようにします。
合理的配慮について知っておくべき4つのポイント
合理的配慮するにあたって以下のポイントは特に重要です。
- 企業との話し合いによって決められる
- 提案者は障害者手帳の保有が必須ではない
- 提案は基本的に障害者側から行う必要がある
- 合理的配慮とわがままは異なる
続いて4つのポイントを順番に解説していきます。
1.企業との話し合いによって決められる
合理的配慮を提供するにあたって企業側との話し合いは必須です。「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」を見ると、負担が重すぎない範囲で対応するように書かれています。
たとえば身体障害を持つ人の座席を出入り口付近に設置するのは、会社側にとっても負担が大きくありません。一方で「会社の出金が面倒だから移転してほしい」というのは無茶なお願いです。
合理的配慮では障害者の負担を軽減することが理想的ですが、そこには企業側の負担も含まれます。一方的に障害者が働きやすくなるだけの合理的配慮は間違いなので注意が必要です。
2.提案者は障害者手帳の保有が必須ではない
合理的配慮は以下の特徴に当てはまる人が受けられます。
- 身体障害
- 知的障害
- 精神障害
- 発達障害
- その他の心身の機能の障害があって職業生活に制限を受けている者
上記の障害であれば合理的配慮の対象者です。障害手帳の有無や終業時間などは一切関係なく、障害の特性によって社会の中で困難を感じる人すべてが対象となっています。
ただ、障害の程度が低く、そこまで仕事に大きな支障をきたしていない場合は対象外です。ほかにも、一時的な障害で働きづらくなるケースも合理的配慮の対象には含まれません。
素人には合理的配慮すべきかどうかの判断が難しいので、就労移行支援のような障害の専門機関に頼った方が良いでしょう。
3.提案は基本的に障害者側から行う必要がある
合理的配慮は障害者側から企業へ提案するのが基本ルールです。一見すると「企業側も注意してあげるべきではないのか」と思いますが、このルールには歴史があります。
以前まで、障害者は保護される存在として扱われていて、障害者に何かを選択する権利はありませんでした。そこから時代を経て、障害者にも決定する権利が与えられて、現在の「障害を持つ人も持たない人も平等であるべき」という考えになりました。
そのため合理的配慮は障害者側から提案することになっています。ただ、必ずしも障害者側から提案する必要はありません。企業側も障害のある人を雇う際に、合理的配慮のことを聞いておくと良いでしょう。
4.合理的配慮とわがままは異なる
合理的配慮するにあたって注意すべきなのが「その提案がわがままであるかどうか」です。わがままを聞き入れてしまうと、障害のある人にとっても企業側にとっても良くありません。
合理的配慮のことを提案されたら、しっかりと中身を検討して導入する価値があるかどうか決めましょう。ちなみに合理的配慮とわがままの具体例は以下の通りです。
合理的配慮 | わがまま |
自分で発言するのが苦手なので、定期的に面談してほしい | 自分で発言するのが苦手なので、そっちから声をかけてほしい |
人から指摘を受けるのが苦手だから、事前にルールを決めてほしい | 人から指摘を受けるのが苦手だから、注意しないでほしい |
クーラーが苦手なため、夏場はひざ掛けや長袖を使いたい | クーラーが苦手なため、私がいる際はクーラーを消してほしい |
周りに大きな迷惑がかかるお願いはわがままに当たるので注意しておきましょう。
合理的配慮が行われる一連の流れ
合理的配慮は以下の流れで実施されます。
- 障害者側からの相談を受ける
- 障害者と企業で話し合う
- 両者合意したら実行に移す
では具体的な流れを3つのステップに分けてみていきましょう。
ステップ1.障害者側からの相談を受ける
合理的配慮は基本的に障害者から提案する必要があるので、まずは障害を持つ人から声がかかるのを待ちます。中には遠慮がちな障害者もいるので、企業側から何か困っていることがあるかどうか聞くのも良いでしょう。
ステップ2.障害者と企業で話し合う
障害者から提案をもらった企業は、その内容が「負担が重すぎない範囲であるかどうか」を検討します。内容が問題なければ実行に移し、負担が重すぎる場合は話し合いで調整していきましょう。
ステップ3.両者合意したら実行に移す
両者合意した場合は合理的配慮を実行していきます。合理的配慮が完了したあとは、改善されたかどうかヒアリングしましょう。もし不足がある場合は再度話し合って、理想的な合理的配慮へ近づけていきます。
障害別に見る合理的配慮の具体例
ここまでの解説で合理的配慮のことがよく分かってきたと思いますが、具体的に何をしてあげれば良いのかわからないでしょう。そこで4種類の障害別に合理的配慮の具体例を見ていきます。
身体障害の合理的配慮
身体障害の合理的配慮は以下の通りです。
- 車いすを使っている労働者に対して時差出勤を許可する
- 作業しやすいようにその人が利用しやすい導線を確保する
- バリアフリーを導入する
- 音声信号や点字ブロックを導入する
- 業務指示を筆談で行う
知的障害の合理的配慮
知的障害の合理的配慮は以下の通りです。
- ほかの人と話すよりゆっくりとしたスピードで会話する
- コミュニケーションボードを使って会話する
- 写真を使ったり文章にルビを振ったりしてわかりやすいマニュアルを用意する
- 本人のレベルに合わせて仕事を割り振る
- マンツーマン指導して本人の理解度をチェックする
精神障害の合理的配慮
精神障害の合理的配慮は以下の通りです。
- 一人で休憩できるように休憩時間をずらす
- 本人がリラックスできる場所で休憩してもらう
- 仕事の優先順位を教える
- その日の目標や作業時間などを具体的に提示する
- 業務内容をパターン化して混乱させないようにする
発達障害の合理的配慮
発達障害の合理的配慮は以下の通りです。
- 「ここをチェックしておいて」といった曖昧な指示を避ける
- 物事の優先順位を教える
- マニュアルを与えて随時確認できる環境にする
- ひとつの作業が終わってから次の作業に移るよう指示する
- 1日のスケジュールを立ててその通りに進めてもらう
発達障害者向けの合理的配慮でお悩みの方は「ディーキャリア」まで
合理的配慮のことはなんとなくわかったと思いますが、それでも自社だけでは手に負えないと感じる人もいるでしょう。障害のある人はそれぞれ特性が異なるので、その人に合った合理的配慮を与えるのは非常に困難です。
自社だけで合理的配慮ができないと感じる場合は、障害に詳しいプロを頼りましょう。プロであれば会社と障害者の両方を考慮した合理的配慮を検討してくれます。
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発達障害を持つ人のサポートに強みがあるディーキャリアでは、企業向けのサポートも実施しています。合理的配慮のことで悩みがある場合は、まず相談から始めてみてください。
まとめ
合理的配慮の意味や注意点、やり方などを紹介してきました。
合理的配慮とは簡単に言うと、障害のある人が自分らしく働けるように企業側が配慮してあげることです。的確に配慮してあげることで、お互いにメリットを得られます。
ただ、障害者の気持ちを優先するあまり、わがままを聞いたり、自社の負担が大きくなりすぎると合理的配慮は失敗です。あくまで障害者と企業の両者が無理のない範囲で実施する必要があります。
もし自社だけで的確な合理的配慮ができそうにない場合は、専門機関に頼るのもひとつの手段です。
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