障害者が就職するにあたって、一般枠とは違う障害者枠というものがあります。障害者枠は障害者だけが利用できる枠で、一般枠に比べてライバルが少ないので比較的採用されやすいです。
しかし、障害者枠で入社すると生活できないと悩む人がたくさんいます。では、なぜ障害者枠が生活できないのか、対処法もあわせて紹介していきます。
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障害者枠で生活できないと言われる4つの理由
障害者枠は以下の理由から生活できないと言われています。
- 労働時間が短い
- 一般雇用に比べると給料が安い
- 正社員の割合が少ない
- 定着率が悪い
続けて、4つの理由を順番に詳しく紹介していきます。
1.一般雇用に比べると給料が安い
「平成30年度障害者雇用実態調査結果」によると、障害者枠で働いている人の平均月収は以下の結果になっています。
- 身体障害者…215,000円
- 知的障害者…117,000円
- 精神障害者…125,000円
- 発達障害者…127,000円
この数字は一般雇用と比べると低い数値です。「令和2年賃金構造基本統計調査結果の概況(10) 都道府県別にみた賃金」によると、正社員の全国平均は307,700円です。
身体障害者は比較的に月収が良いですが、その他の障害を見ると全国平均の半分以下にとどまっています。月収12万円程度では生活できないと言われる理由も分かるでしょう。
2.正社員の割合が少ない
「平成30年度障害者雇用実態調査結果」によると、約80%の人が非正規社員として働いています。非正規が多いからこそ、障害者雇用の平均月収は低くなっているのです。
障害者雇用が正規として雇われにくいのは、本人の体力面や精神面などが関係しています。一般雇用の方は週に5日、フルタイムで問題なく働けるでしょう。
しかし、障害者の中には、障害の問題でフルタイムで働くのが難しい方もいます。無理をすると体によくないので、非正規雇用枠で体調と相談しながら働いている方が多いです。
3.労働時間が短い
「2019年労働時間等実態調査集計結果」を見ると、月あたりの労働時間は以下の結果になっています。
- 一般労働者…166.5時間
- 身体障害者…149.7時間
- 知的障害者…139.4時間
- 精神障害者…138.6時間
- 発達障害者…146.6時間
障害者枠の場合は、障害者雇用促進法が適用されて、週に20時間未満では雇用率にカウントされません。障害者雇用促進法があるため、週に20時間以上働いているケースがほとんどです。
しかし、月の労働時間で見ると、一般労働者ほど働けていません。一般労働者と比べると20~30時間程度少ないです。労働時間に応じて給料も減るので、生活できないと苦しむ方もいます。
4.定着率が悪い
「平成25年度障害者雇用実態調査」には、以下の理由で退職を選ぶ人が多いと出ています。
- 職場の雰囲気や人間関係が悪い
- 賃金や労働条件が合わない
- 仕事内容が合わない
- 体力的にもたない
- 障害が再発・悪化した
- 会社の障害に対する理解度が薄い
障害者枠を用意している企業は、一般企業と比べると障害の理解はあります。
しかし、障害の理解度は企業によって異なり、配慮されていると感じないことも多いです。一般労働者と変わらない扱いを受けて、心身ともに限界を迎える人もいます。
また、障害者職業総合センターが発表した「障害別にみた職場定着率の推移と構成割合」を見ると、就職してから1年目の在職率は低いです。
- 身体障害者…60.8%
- 知的障害者…68.0%
- 精神障害者…49.3%
- 発達障害者…71.5%
中でも精神障害者の職場定着率は異常に低いです。精神障害は目に見えないケースが多いので、企業としても対処法が分からないのでしょう。
障害者枠で生活できない人におすすめの制度
障害者枠で生活できない場合は、以下の制度を利用することで改善するでしょう。
- 障害年金
- 生活保護
- 特別障害者手当
- 障害者控除
続いて、4つの制度の特徴を紹介していきます。
障害年金
障害年金は所定の障害が認められた時に受け取ることができる公的年金の一種です。障害年金は障害レベルに応じて支給額が変わり、年間で80~100万円程度受給できます。
毎月安定して数万円の支援を受けられますが、デメリットもあります。
- 障害年金を取得するまでに最短でも1~4か月必要
- 手続きが複雑で書類集めが大変
「年金相談センター」から手続きできますが、素人が手続きするのは難しく、時間もかかります。そのため、障害年金の受給に当たって社会保険労務士に依頼する人も多いです。
障害者控除
障害者控除とは、本人や配偶者、もしくは扶養親族に障害がある場合に、一定の控除を受けられます。控除される税金と金額は以下の通りです。
区分 | 所得税 | 住民税 |
障害者 | 27万円 | 26万円 |
特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
障害の症状が重い方は特別障害者に当たります。特別障害者の中でも、配偶者や扶養親族と同居している場合は同居特別障害者です。
いずれにしても高い金額の控除を受けられます。生活できないとお悩みの方は確認しておきましょう。
特別障害者手当
特別障害者手当は重い症状を持つ障害者が利用できる手当です。常時介護が必要になるほどの症状がある20歳以上の方に利用資格があります。
特別障害者手当を受給する場合は、お住まいの近くにある保健福祉センター福祉業務担当を尋ねましょう。申請の際にはマイナンバーと医師からの診断書が必要になります。
ちなみに、申請資格が認められると、毎年2月・5月・8月・11月に各月の前月分までの手当が支給されます。金額は月額27,350円です。
生活保護
生活保護は生活に苦しむ人に対して生活費や住居、医療、介護などを支援する制度です。生活していくために必要な最低限のお金を受給できます。
障害者枠で生活できないと悩んでいる方にはぴったりですが、受給条件が厳しいです。例えば、個人的には生活できない給料であっても、同居する人に十分な収入がある場合は、生活保護を受給できません。
その他にも、生活保護を受給するためには、最低でも5つの要件を満たす必要があります。
- 現在の収入が厚生労働省の定めた数値を下回っている
- 病気や障害などによって働くことが難しい
- 資産となる土地や家などの不動産を所有していない
- 障害者年金のような国の制度を利用しても足りない
- 親族からの支援を受けられない
生活保護はご紹介した4つの支援の中でも、最終防衛ラインにあたります。まずは障害者年金や障害者控除を利用して、それでも厳しい場合は生活保護を利用しましょう。
障害者枠で生活できない場合の対処法3選
障害者枠で生活できない場合は、障害者向けの制度を利用する以外にも方法があります。
- 副業で収入を補う
- 転職エージェントを利用する
- 就労移行支援事業所に通所する
順番に詳細を解説していきます。
対処法1.副業で収入を補う
最近ではIT化が進み、気軽に副業できる環境が整っています。パソコンさえ使えれば稼げる副業も多いので、障害者枠の給料だけでは生活できない方にぴったりです。
副業すれば自宅に居ながら自分のペースで働けるメリットもあります。順調に進めばそのまま独立することも可能です。独立できれば会社で苦労することなく、体調と相談しながら働けます。
ただ、副業で成功するのは簡単ではありません。思うように稼げないことの方が多いです。何のプランもなしに始めると失敗し、余計なストレスを抱える可能性もあります。
副業を始める場合は、本業や体調に支障をきたさないレベルで取り組みましょう。
対処法2.転職エージェントを利用する
今の給料では生活できないという方は、転職エージェントを利用するのもおすすめです。転職エージェントを利用すると、3つのメリットが得られます。
- 企業が求める人材を把握しているからミスマッチが起こりづらい
- 公開されていない優良求人を紹介してもらえる
- 面接対策や履歴書の書き方など転職活動へのサポートを受けられる
転職エージェントは転職をしっかりとサポートしてもらえます。中でも障害者枠に特化したサービスはおすすめです。
障害者枠に特化したエージェントは、障害の理解もあります。自分の体調を相談すれば、どのような仕事に就いたら良いのかアドバイスをもらえるでしょう。
対処法3.就労移行支援事業所に通所する
就労移行支援事業所とは、障害を持つ人が一般企業への就職を目指すことをサポートする場所です。事業所では様々な訓練を通して、働く力を身に付けていきます。事業所によって覚えられる内容は異なりますが、例えば以下の訓練を受けられます。
- PCの操作スキル
- コミュニケーション能力
- 面接対策
- 自己PR
- 障害理解
基礎的なことから始められるのが特徴です。転職エージェントではコミュニケーションの訓練やPC訓練までは行ってくれません。就労移行支援を利用すれば、土台から鍛えられるので仕事や障害に対する悩みも軽減するでしょう。
ちなみに、発達障害をお持ちの方にはディーキャリアがおすすめです。ディーキャリアは発達障害の支援に特化しています。訓練内容も優れていて、ディーキャリアから就職に成功した人の初給料は平均19.1万円です(2019年度)。
収入アップも期待できるディーキャリアでは無料体験も行っています。気になる方は一度ディーキャリアに訪れて、話や訓練な用を確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
障害者枠が生活できない理由や対処法を紹介してきました。障害者枠は体調の問題で労働時間が短くなる傾向があります。労働時間が短くなると給料も安くなるので、生活できないというわけです。
現在の収入だけでは生活できない方は、障害者向けの制度を確認しましょう。障害者年金や生活保護などの制度を利用すれば、生活が改善されます。
障害者向けの制度を使ってもお金が足りない場合は、転職エージェントや就労移行支援で転職を図るのも一つの手段です。
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