発達障害のある人は、仕事が長続きしないといった悩みを抱えていることがあります。就職が決まっても比較的早い段階で辞めてしまい、結果的に転職を繰り返す人も少なくありません。
この記事では、発達障害のある人が抱えている悩みや、長く働き続けるために必要なことをお伝えします。仕事が長続きしないと悩む人にとって、「自分はどうなのだろう?」と考えるきっかけになればうれしいです。
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仕事が続かない原因のひとつは発達障害
仕事があまり長続きせずに転職を繰り返しているなら、その原因は発達障害かもしれません。発達障害は知的発達の遅れを伴わないことが多いため、子供の頃は気付かれず、大人になってから発覚するケースがあります。
発達障害のある人が長く働き続けられないのは、発達障害の特性がコミュニケーションや業務上の問題に発展することがあるからです。そして、周りだけでなく、本人も自分が発達障害であることに気付いていない可能性もあります。
周りが発達障害だと認識していない場合、発達障害によるコミュニケーションの問題や業務上のミスが、本人の不注意や意識の低さが原因だと誤解されてしまいます。
本人に発達障害の自覚がない場合は、必要以上に自分を責めてしまうこともあるでしょう。その結果、発達障害のある人が働きづらさを感じ、退職を選んでしまうのです。
発達障害の人が長く働くために必要なのは、まずは自分の障害特性について知ることです。
どういった点でつまずくのかを明確にし、自分が苦手としていることを把握できれば、それに合わせた対応を考えられます。そうすれば仕事が長続きするようになるでしょう。
すでに発達障害だと診断を受けている人も、自分が発達障害ではないかと考えている人も、発達障害について知ることで現状を変えられます。
詳しくは「大人の発達障害とは」の記事を参考にしてみてください。
発達障害がある人はどんなことで悩んでる?
発達障害がある人は具体的にどのようなことで悩んでいるのでしょうか。
発達障害のある人が職場でよく注意されることとして、具体的には以下の項目が挙がっています。
- 仕事のミス:47.0%
- 仕事が遅い30.4%
- 段取りが悪い:18.3%
- いちいち指示されないとできない:13.9%
- 不器用:13.4%
- 言葉遣いの悪さ:7.8%
- 遅刻:6.1%
これらは、発達障害の特性が原因だと考えられます。 発達障害がある人には、一度嫌なことがあるとネガティブ思考になりやすい一面があり、ミスを指摘されて委縮してしまい、うまく仕事ができなくなるケースも。
そして、発達障害がある人はコミュニケーションを苦手とすることが多く、歓迎会や忘年会といった集まりへの参加を負担に感じてしまいます。
そのため、コミュニケーションが不足して人間関係がスムーズにいかないことも、周囲や本人の悩みの種となるでしょう。
また、仕事内容が簡単すぎることに悩む人もいます。発達障害があることを職場に伝えて働く場合、障害をひとくくりにして単純作業が割り振られることがあります。
発達障害がある人は能力的に優秀な人も多く、単純作業では仕事にやりがいを感じられません。その結果、退職を選ぶ人もいるでしょう。
苦手なことを避け、得意を生かした仕事であれば、長く働ける可能性は高まります。発達障害の種類によって苦手なことや強みは異なるため、ここからはどのような発達障害があるのかを紹介します。
自閉症スペクトラム症(ASD)
自閉症スペクトラム症(ASD)は、自閉症、アスペルガー症候群などをまとめた総称です。
【自閉症スペクトラム症(ASD)の主な特徴】
- コミュニケーションや対人関係を苦手とする
- 興味を抱く範囲が狭く、強いこだわりを持つ
コミュニケーションを苦手とするASDは、なかなか職場になじめません。そのため、ちょっとしたすれ違いが業務上のミスにつながる可能性も高いでしょう。関係性の理解が難しく、上司に対しても同僚と同じように話し掛けてしまうケースも。
また、こだわりが強いため、業務に対して臨機応変に振る舞うことが苦手です。そういった点から、仕事が遅いと見られてしまうこともあります。
しかし、興味のある分野に対するこだわりは、職場でも評価されるポイントです。一人でコツコツ仕事に打ち込める状況なら、ASDの強みを生かせるでしょう。
注意欠如・多動性障害(ADHD)
注意欠如・多動性障害(ADHD)には「不注意」と「多動・衝動性」があり、どちらかが優勢なタイプと両方の特徴を持つタイプの3種類に分かれます。
【注意欠如・多動性障害(ADHD)の主な特徴】
不注意
- 集中力が続きにくい
- うっかりミスが多い
多動・衝動性
- じっとしていられない
- 感情コントロールが苦手
不注意が優勢なADHDだと、忘れ物やうっかりミスが目立ってしまうでしょう。また、気が散って集中できないことが多いため、仕事に必要以上の時間がかかってしまうことも。
多動・衝動性が優勢の場合は、動きたい衝動を抑えることが難しく、じっとしているのが苦手です。ついカッとなってケンカ腰になってしまうといった、感情コントロールが苦手な一面もあります。
ADHDは比較的明るい人が多く、職場の集まりでもコミュニケーションが取れるでしょう。ADHDの特性である決断力や行動力を生かした仕事なら、周囲のフォローを受けつつ長く働けそうです。
詳しくは「ADHDの仕事について」の記事を参考にしてみてください。
学習障害(LD)
学習障害(LD)は、読み書きや計算を苦手としています。
【学習障害(LD)の主な特徴】
- 似たような形の文字を見分けにくい
- 文字を思い出すのに時間がかかる
- 文章を読むのに時間がかかる
- 繰り上がりの計算が苦手
- 足し算や引き算などの暗算が苦手
知能的な遅れがあるわけではなく、「め」と「ぬ」のように、文字の形が似ていると区別がつかない、漢字が覚えられないといった障害があります。
同様に、計算を苦手とする場合は、数の大小といった数字そのものに対する理解が難しい状態です。
マニュアルを確認しながら行う仕事の場合、一文字ずつ読むため時間がかかってしまうことがあります。しかし、イラストや図を添えたマニュアルや口頭での説明など、周囲のフォローがあれば問題なく仕事ができるでしょう。
本人の努力だけでは仕事が続かないケースもある
発達障害の特性について理解できれば、仕事上で気を付けたい部分や自分が働きやすい環境も分かります。しかし、本人の努力だけで仕事が長続きするとは限りません。「こういう人なんだ」と職場で理解してもらうことも重要です。
例えば、ミスの原因となるため、「できるだけ早く」「迅速に」「急ぎ」といった優先順位の分からない曖昧な指示を避けるように依頼する必要もあるでしょう。
その場合、発達障害であることをオープンにして、障害者雇用枠で就職する方がよいケースもあります。
生まれつき脳の機能に障害があるのが発達障害です。大切なのは、発達障害は障害であって、本人の努力ではどうにもならないことがあると理解することです。
仕事を続けるためには、発達障害による苦手をなくす努力をするのではなく、苦手なことに対してどう対応するかを考えましょう。
また、職場選びも長く働き続けるために重要なポイントです。オープン就労で職場に配慮をお願いするとしても、自分の障害特性を知らないとお願いできません。
そして、自分自身の苦手に対して対策を考えるためにも、障害特性に対する理解が必要です。
専門機関の力を借りよう
仕事上の悩みは、自分一人で解決するのは難しいことです。特に、障害特性に関わることであれば、自己判断するよりも専門家に相談する方がよいでしょう。
同じ発達障害であっても、症状は一人ひとり異なります。自分の場合はどうなのかを専門家に相談することも大切です。
ここからは、発達障害で仕事が続かないと悩む人が相談できる専門機関を紹介します。
医療機関
心療内科や精神科、発達障害専門医といった医療機関は、発達障害の相談先のひとつです。最初にお伝えしたように、発達障害は大人になってから発覚するケースがあります。
そして、発達障害かもしれないと自覚していながら、まだ診断を受けていない人も多いのです。そういった人は、まず発達障害かどうか診断を受けることをおすすめします。
なぜなら、発達障害だと診断されることで受けられる支援があるからです。
また、現在は在職中で休職を検討している場合、医療機関の診断書が必要となるでしょう。発達障害の特性からくる働きづらさが原因で、うつや不安障害といった二次障害を引き起こしている可能性もあります。
何らかの不調を感じた場合には、気軽に医療機関を受診しましょう。そのときに、発達障害についても相談してみるといいですね。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害がある人への支援を総合的に行うことを目的とした専門的機関です。すでに発達障害だと診断された人だけでなく、発達障害の可能性がある人の支援も行っています。
発達障害者支援センターでは、職場での働きづらさや日常生活で苦労していることについて相談できます。医療機関を紹介してくれるケースもあるため、まずは相談に行ってみましょう。
地域障害者職業センター
働くことに関しては地域障害者職業センターで相談できます。地域障害者職業センターは、その名のとおり、障害がある人の仕事に関する支援を行う施設です。
全国47都道府県に設置されており、ハローワークと連携して障害がある人に対する職業リハビリを提供しています。
障害のある人を対象とした施設ですので、診断を受けていない人は発達障害の疑いがあるとして、まずは問い合わせてみましょう。
就労移行支援事業所
就労移行支援は、障害がある人の就職をサポートしてくれる通所型の障害福祉サービスです。一般企業への就職を目指す人を対象としており、長く働き続けるためのトレーニングが受けられます。
就職に向けたサポートだけではなく、就職が決まってからの定着支援もあります。新しい職場での悩みも相談可能ですので、就職してからも安心です。
就労移行支援は障害のある人が働く力を身に付けられるサービスですので、離職しているなら就労移行支援の利用をおすすめします。
全国には3500カ所以上の事業所があるため、自宅近くの通いやすい事業所も探せるでしょう。
詳しくは「就労移行支援とは」の記事で紹介しているので参考にしてみてください。
就労移行支援で長く働き続けるための訓練をしよう
就労移行支援なら、発達障害のある人が感じる働きづらさを軽減できます。
就労移行支援の利用に関しては、
- 65歳未満まで
- 原則2年間
といった制限があります。
利用期間の2年で就職が決まらなかった場合、1年間の期間延長も可能です。ただし、審査によっては延長できないケースもあります。就職が決まるまでの利用のため、早ければ数カ月で卒業です。
事業所の利用料金は1カ月0円~37,200円で、金額は前年度の収入によって変動します。
就労移行支援ならなりたい自分になれる
就労移行支援には、
- 障害特化型
- 専門スキル特化型
- 総合型
といった種類があります。
プログラムの内容も事業所ごとにカラーがあるため、やってみたいと思うことや興味のあることで選びましょう。就労移行支援なら、これから就職するための強みを増やせます。
詳しくは「就労移行支援の選び方について」の記事で紹介しているので参考にしてみてください。
自分の障害特性に対する理解が深まる
対象とする障害の種類を限定しているのが、障害特化型の事業所です。発達障害に特化した事業所なら、発達障害の特性に応じたプログラムを提供しています。
例えば、当サイトがおすすめすするディーキャリアのプログラムは、
- コミュニケーション能力を身につけるプログラム
- ストレスへの対処法を学ぶプログラム
- セルフケア方法を学ぶプログラム
- 模擬職場での特性理解を深めるプログラム
といった発達障害がある人の退職理由から開発した内容です。
長く働き続けるためには、自分自身の障害特性を理解する必要があります。就労移行支援を利用して、自分への理解を深めましょう。
長く働き続けるための定着支援がある
発達障害がある人の場合、就職することよりも、その後に働き続けることの方が難しいでしょう。
就労移行支援では、定期的な面談や突発的な相談など、就職してからも定着支援が受けられます。事業所スタッフが、職場に対して面談を行ってくれるケースもあります。
就職してすぐは、新しい職場で新たな問題が起きないか不安になるでしょう。社外に相談できる人がいるという安心感があれば、不安を軽減できます。
まとめ
発達障害のある人が長く働くためには、自分の障害特性を知ることが大切です。その上で、長く働き続けられるよう工夫する必要があります。
ただし、自分の努力だけではどうにもならないこともあるため、職場選びも重要なポイントです。しかし、自分一人で働きやすい職場を探すのは難しいでしょう。そういった発達障害がある人の就職には就労移行支援の利用がおすすめです。
就労移行支援には、仕事が続かなかった過去を乗り越えるためのサポートがあります。仕事が続かなかったのは障害特性が原因だった可能性があるため、必要以上に自分を責めなくて大丈夫です。就労移行支援を利用して、長く働ける職場を見つけましょう。
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